高校デビューの卓球初心者vs.告白100人斬りの女子マネコーチ
チャプター 1 プロローグ:モテる女はツライよ。

「好きです! 付き合って下さいッ!」 「ふーん。で、アンタ。【アタシのどこが好き】なの?」 「全部です!」 「ハ? アナタが【アタシの何を知ってる】のかしら?」 「去年のミスコン優勝で‥‥超可愛いし」 「はい、ストップ!【アタシの顔が好みなだけ】なのね?」  はあ、またこのパターンか‥‥去年の学内ミスコンに【泣き落とし】で出場させられ、優勝してしまった所為で、もう100人目なのよね。  そして、空を見上げると曇り空。  告白の場は、いつも何故か曇天だったりするわけよ。 「いや、顔だけじゃなくて‥‥あの、ナイスバディな所とか‥‥」 「見た目だけ?」 「あー、えっと‥‥、中学の卓球で銀メダル獲ったとか‥‥」 「そんなの【誰でも知ってる】わよ。他には?」 「え、え、えーと‥‥」 「つまり、アンタは【アタシの事を何も知らない】‥‥【顔とスタイルがいいから付き合いたい】のね? 却下、帰れ!」  アタシの眼力に怯んだ告白男子は、腰を引かせて。 「ご、ごめんなさいッ!」  と、逃げていった。  溜息しか出ない。  何故か、アタシの顔は可愛いらしい。  自慢する気は無いけど、ジュニア卓球で銀メダリスト。  近年設立されたオリンピック種目【卓球U-15】女子シングルスで、金メダルを賭けた決勝戦‥‥中国の選手に負けてメチャクチャ悔しかった。  卓球で鍛えられて、自然とスタイルがよくなってしまったらしい。  そして、中三から胸が急成長‥‥アタシは胸が邪魔で卓球の未来を潰された。  こんな脂肪の塊、本気で要らない。  高校二年生になった今も更に成長している‥‥。  もっと背が伸びたら良かったのにな‥‥平均以上の身長は、卓球を有利にするのよ。  そして、毎日のように靴箱にラブレターが入っていて、まず選別。  差出人の名前が書いてないヤツは【即ゴミ箱行き】。  名前が書いてある中で、宛名がアタシになってるヤツは一応読む。  失礼がないように指定された待ち合わせ場所に行く。  屋上だったり、校舎裏、体育館裏、定番の場所ならね‥‥学校の外は却下。  でも、いつも結果は同じ。  卓球部の男子からも全員に告白されていた。  と言っても、アタシのコーチングに着いてこれなくて、次々と辞めてくから今は10人だけど。  卒業していった先輩も含め、全員フッてきた。

チャプター 2 プロローグ2:高校デビュー!

僕は恋をしたことが無い。  特に好きなアイドルとか女優もいない。  高校進学に当たっての目標は、初恋して彼女を作り、青春を謳歌する事!  ついでに、親孝行のため卓球部に入る予定。  両親とも卓球部上がりで、卓球繋がりから恋愛結婚。  僕にも中学に入る時、卓球部に入ってほしいと頼まれたが、反抗期だった僕は趣味の囲碁将棋部に入部した。  高校進学が決まって、反抗期も終わったのか『高校からでも良いから卓球を始めてほしい』と両親に再度頼まれ、親孝行精神に目覚めた僕は卓球部に入る予定にしたんだ。  貯めていた小遣いをはたいて美容院に行き、バッチリ髪型をキメて高校デビューだぜ! 「キミ、絶対モテるよ。私が保証する! また来てね☆」  理容師のおねーさんの太鼓判もあって、自信満々!  入学式で、ザッと新入生を見回してみたが、髪型をバッチリキメてる男子は居ない。  勝った! モテ期到来の予感!  校長の長ったらしい話にウンザリしつつも入学式が終わり、キャンパスには新入部員を獲得しようと、たくさんの部活動が縁日の屋台のようにアピールしていた。  4月7日・月曜・晴れ。  桜は、もうほとんど散ってしまっている時期だけど、柔らかで暖かい日差しが心地良い。  今日は入学式だから、上級生は休みだ。  ま、親孝行のためにも卓球部に入る約束したからな。  卓球部、卓球部‥‥と、あった。  すでに新入生が数人並んでるな。  卓球って人気あるんだろうか?  室内競技で運動音痴な僕でも簡単に出来そうだよな。 「はい、次!」  あ、いつの間にか僕の番だ。  って、受付の女子、メッチャ可愛い!‥‥セーラー服も似合ってる。  何より目を引くのは巨乳。  そりゃ、僕も男だからな‥‥嫌いじゃない。  というか‥‥好きだ。当たり前だよな。  こんな人と初恋できたらいいかもなぁ‥‥。  もしかして、この先輩目当てで並んでたのかも知れないな。 「ボケッとすんな! 次、名前は!」  って、可愛いけど口わりーし、キツイな。 「あ、実矢乃真和です」 「卓球経験は?」 「無いです」 「他のスポーツの経験は?」 「無いです」 「はぁ‥‥なんで【ウチの卓球部】に来たの?」  溜息を吐かれてしまった。  ウチの卓球部って‥‥何か特別なのか?  公立高校だけどな。 「両親が卓球やってて、親孝行に卓球をしようかと‥‥」 「ふーん、親孝行とは殊勝じゃない。でもアンタ、卓球ナメてるでしょ。顔に書いてあるわ!」  なんだよ、いきなり決めつけて‥‥なんかムカツク先輩だなぁ。 「あー。まあ、お遊びみたいなもんですよね?」  つい、カチンと来て挑発的な言葉が出た。  僕の悪い癖だ。 「‥‥今、なんつったッ!?」  なんか、ゴゴゴ‥‥って音を立てそうなくらい怖いオーラを放ってる。 「え‥‥っと、卓球ってお遊びみたいなもんですよね‥‥ですか?」 「マジで言ってんのかコラ! 喧嘩売ってるなら買うぞッ!」  ちょ、マジ怖ぇ‥‥可愛いけど目付きが尋常じゃない。 「え。いや、そんなつもりは‥‥」 「卓球は立派なスポーツよ! オリンピック種目にもなってる。そんな事も知らないのッ!?」 「あ、ごめんなさい‥‥」 「それに、なんだその頭! カッコつけてるつもりか!? 卓球は、チャライ気持ちで出来るほど甘いスポーツじゃないッ!」 「あぅ‥‥」  完全に気圧されて言葉が出ない。 「どうしても入部したいなら、明日丸坊主にして来い! そしたら仮入部を認めてやる」 「え?! 髪型と卓球って関係あるんスか?」 「高校球児を見ろ。スポーツに賭ける高校生は、丸坊主って相場が決まってんのよ! 嫌なら帰れッ!」 「え、いや。全員が丸坊主じゃないッスよね? さっきまで受付してたヤツらだって普通の髪型でしたし‥‥」 「グダグダ言うな! オマエには丸坊主にするくらいの覚悟がなきゃ、卓球なんて出来ないってんのよッ!」  マジかよ‥‥せっかく美容院に行ってキメきたのに、丸坊主とか有り得ないぜ。  やめやめ、両親には悪いけど、卓球部は無理だな。 「帰ります‥‥」  踵を返した僕に。 「フン、根性ナシが」  と、捨て台詞を吐いた女先輩。  ムカツク‥‥いくらなんでも横暴過ぎるよな。

チャプター 3 第一章:仮入部の決定と覚悟

他の部活を覗く気分にもなれず、そのまま僕は帰宅した。  30年ローンで二階建ての一軒家‥‥一人っ子。  二階の自室で入学資料の入ったカバンを放り出し、学ランをハンガーにかけて、セミダブルのベッドに大の字で寝転がる。  ほとんど使っていない勉強机と古いノートパソコン、高校教材。  漫画やラノベ中心の小さい本棚‥‥中学の教科書は捨てた。  あとはテレビ、ブルーレイレコーダー、ゲーム機、将棋盤、囲碁、エアコン。  壁紙は白で、グリーンの遮光カーテン。  スマホを確認してSNSやメールの返事を出す。  そのまま、ウトウトし始めた所で。 「真和ー、御飯よー」  母さんの呼び声に目を覚ます。 「はーい」  階段を降りてダイニングへ。 「おう、真和。これ、入学祝いだ」 「親父、今日は早いな‥‥ありがとう。開けてもいい?」 「もちろんだ」  プレゼントの包装紙を剥がすと‥‥。 「あー‥‥卓球の‥‥ラケット、だよね。これ」 「おう。ペンとシェーク両方買ってきたから、使いやすい方を使うといい。ラバーも結構イイヤツなんだぞ」 「お母さんからは‥‥はい、これ」  ニコニコ笑顔の両親に嫌な予感しかしない‥‥。 「あ、開けるね‥‥」  恐る恐る包装紙を剥がすと‥‥卓球のラケットの絵が描かれた箱。  中身は‥‥やっぱりピンポン球だった。 「ピン球ってのは消耗品だが、1個100円前後するんだぞ」  10ダース=120個‥‥1万2千円!? 「試合用の球になると300円以上するな」  マジかよ!?  めっちゃ言い出しにくいじゃねーか。  ‥‥でも、ここは、キッパリ言わないとな。 「親父、母さん‥‥ごめん。僕、卓球部には入らない事にしたんだ‥‥」 「なんでだ!? 入るって約束してくれたじゃないか」 「そうよ。お母さんも真和と卓球するの楽しみなのよ?」 「なんか仮入部の受付で、丸坊主にして来いって言われてさ‥‥せっかく美容院に行って髪型キメたんだぜ? ごめんな」  椅子に座ったままだけど、テーブルに手をついて頭を下げた。 「うーん、そういう事なら仕方ないかしらねぇ‥‥?」  困ったように親父を見る母さん。 「いや、そんな理由じゃ納得できんな。俺が抗議に行ってやる!」 「貴方、短気を起こして喧嘩はしないでね?」  親父は気が短い所があって、怒ると怖い。  基本的には所謂『いい人』なんだけどな。 「分かってる。明日は早退して、学校に抗議に行ってやるから、真和は校門で待ってろ、な?」 「ん‥‥うん」  とりあえず、頷くと。 「さあさ、御飯が冷めちゃうわ。頂きましょう♪」 「おう!」 「いただきます」  こうして、僕の高校生活が始まった。

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