AMBIVALENCE
チャプター 1 第1話 ことわり

幼少の頃から不器用で人とうまく対峙できなくそれでいて自分勝手な内弁慶のわた し。 …が、人を亡くした。 中3の秋だった。  学校生活という日常を、それにそぐうように演じて乗り過ごして来ることができた今までだったが、失速した。 どんなに空元気を絞っても ”答え”など取り戻すことができない。 そうして滑り落ちていく日々の中で、いつの間にか、頭の中に何かを住ますようになり、それがわたしを動かし、わたしの目を曇らせ、発狂させた。

チャプター 2 第2話 僅か

煌々と輝く月光に身をあずける日もある。  あれから20年弱… 慌ただしくてどこか息苦しい日々が続いて…夜空の星にさえ気づかないことは今も変わらない。  子どもの頃、折角「星が綺麗だ」と教えてくれる人が隣にいても横顔の方に興味が注がれた。  一緒に住んでいた男の子は『兄』だった。 会話はお互いに一方的で成立しないし、よく喧嘩もした。 置き手紙のように置かれた夕焼けの写真を見て 夕焼けの美しさを知った。 夏休みの工作の写真たてにそっと捧げた。 そんな記憶はもう僅かでまどろんでいく…。歳月を伸ばしただけのわたしの古びた殻。  兄は、17の時に真っ白な人形となった。 何度触っても足りないくらい別れを惜しんだ。  そうして わたしはまた呟くようになる 『友達に似ても非なる人の名前を』 兄と学校と…は、わたしにいわゆる健常者という夢を見させた。 長い夢の終わりに、叫ぶのは 「大事にしてきたとか、されてきたとか、唯一無二の存在だったとか」 他に伝える言葉もなく、話し足りないことは虚空に舞って喉が切れ切れになって音にもならない。 月を背にして今日も眠る。

チャプター 3 第3話 階段から滑り落ちる、とういことを知る時

―15年ほど前・・・  通信制の大学生になっていた。  高校を中退してからフリースクールに所属し高校は通信制で卒業した。 フリースクールの同年代の親しい先輩たちもここの通信制大学に入学していたので、わたしはどんな大学かとか卒業するまでの方法やシステムを全く聞かずに、下調べもせずに入学していた。  ”神預け―” 当時、神様のような人だと信頼しきっていたフリースクールと、わたしの関係はそんな言葉で評すだろう。  通信制大学のレポートの悪戦苦闘はストレスを抱えながらも書けた時が楽しい、嬉しい。 だけど2年生くらいの時にスクーリングで思い知った。 先生が何を話しているのか全く聞き取れなかった。もちろん日本語で話していた。合格はしたとしても、わたしには勉強はできないと知った。  東京に着けば勉強を心配しても観光が楽しい。 ホテルを選んで利用してみたり、電車を色々乗り継いでみたり。 でも東京の街に親しみながら、頭の中は白くなっている…。 ―勉強…自分ではできないことをしてるのだと潜在意識から表面へうっすら浮かび上がって体を硬直させた。  電車の中で 明るい雰囲気のカップルと会った。 何故か女性の方には興味をもたず、にこやかにしている男性を横目で眺めていた。 ふらふらと足のバランスを崩してみた。 友達と初めて静岡駅までいった日、到着するときに友達が電車の揺れで体勢をくずしたのを思い出していた。 わたしは酔っぱらってもいないし大根役者だ。それでも2、3回足元を危うくしてみせた。 この人生に、誰かが終止符を打ってくれることを欲していた。 男性の方はこちらに振り向いた。 ―笑った。― ような気がする。 正面で顔を眺められないくせにわたしは、大胆なことをしたものだと思った。 バカな演技はやめて 明日からの未来をどうするかを真剣に自分で考えてみなくては、と思った。

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