家が破産し、私は姉の宋玥を進学させるため、芸能界に足を踏み入れた。 金のために、下品な男たちのセクハラに耐えた。 胃から血を吐くまで酒も飲んだ。 いつもは菊のように清らかで俗世に興味などないという顔をしている姉が、私を功利に走り、自分を安売りしていると蔑んだ。 その一方で、姉は私の稼いだ金で見ず知らずの人々を助け、慈善家としての名声を手に入れていた。 姉に著名な画家の指導を受けさせるため、私は彼女のライバルの醜聞を暴露した。 すると姉は、手段を選ばない私のやり方は心が汚れていると非難した。 だが、私が汚い手を使って掴んだチャンスを、姉が拒むことはなかった。 やがて姉は、名の知れた画家になった。 そして私は、姉のライバルからの狂気じみた報復を受け、すべてを失った。名声は地に堕ち、莫大な借金を背負わされた。 私は姉に、富豪である彼女の恋人に助けを求めてほしいと懇願した。 しかし、彼女は冷たく言い放った。「宋珍、前にも言ったでしょう。人は善良でいるべきで、あんな毒々しい考えは持つものじゃないって。ご覧なさい、今あなたは天罰を受けたのよ!」 姉は、私に過ちを認めさせるためだと言い、救いの手を差し伸べることを拒んだ。 追い詰められた私は、ビルの屋上から身を投げた。 次に目を開けた時、私は芸能界に入ったばかりのあの日に戻っていた。 1 ホテルのロビー。禿頭の監督の、脂ぎった手が私の尻を叩く。 「いいね、宋くん。明日のオーディション、忘れるなよ」 私は引きつった笑みを顔に貼り付け、その背中を見送った。 振り返ると、姉の宋玥と目が合った。 彼女は、この世の終わりのような顔をしていた。 私に向けるその眼差しには、侮蔑と羞恥が滲んでいる。 数分後、誰もいない片隅で、宋玥は顎をしゃくり上げて私を見下し、前の人生とまったく同じ言葉を口にした。 「宋珍、あんな気持ち悪いオヤジにまで媚びを売るなんて、なんてふしだらなの!同級生にも見られたのよ。本当に恥ずかしい、気分が悪いわ!」 その瞳に浮かぶ隠しようもない嫌悪感は、まるで私が肥溜めにうごめく虫であるかのように感じさせた。 かつては裕福な家の令嬢だった宋玥は、幼い頃から蝶よ花よと育てられた。 一方、妹である私の人生は悲惨なものだった。 五歳で誘拐され、それからはずっと児童養護施設で育った。 十八歳でようやく家族の元へ戻れたが、幸せな日々は数ヶ月も続かず、宋家は破産した。 父はビルから身を投げ、母は病でこの世を去った。 宋玥は、私にとって唯一残された肉親だった。 だから、彼女にだけは苦労させたくなかった。 私は大学を休学し、その学費をすべて姉に譲った。 だが、姉が専攻する美術は、とにかく金がかかった。 金策に走り、私は芸能界という世界に飛び込んだのだ。 後ろ盾のない私が仕事を得るには、監督に頭を下げ、時には色を売るしかなかった。 前の人生の今日、私はとあるドラマの脇役を手に入れるため、あの気色の悪い監督の酒に夜通し付き合った。 その帰り際、偶然にもこのホテルで食事をしていた宋玥と鉢合わせてしまったのだ。 彼女は、私がセクハラを受けていることにも、必死で金を稼いでいることにも関心を示さなかった。 彼女にとって重要なのは、ただひとつ。私が彼女に恥をかかせたという事実だけだった。 あれは仕事のため、金を稼ぐためだといくら説明しても、姉は聞く耳を持たなかった。 「お金を稼ぐ仕事なんていくらでもあるでしょう?どうしてよりによってそんなことをするの? お金がないなら、少しは節約したらどう? 人として、そんなに見栄を張らないと生きていけないの? もしあなたがそんなやり方で稼ぐなら、私、あのお金は使えないわ」 前の私は、この姉をあまりに大切に思うあまり、彼女の言うことはすべて正しいのだと思い込んでいた。 彼女に恥をかかせた自分を、心の底から責めさえした。 だが、私に見栄を張るなと説教した彼女は、その舌の根も乾かぬうちに、メンツのために私の財布からなけなしの金、数万円を抜き取り、友人との食事に行ってしまった。 彼女は私の金をすべて持ち去り、私がその後どうやって生きていくかなど考えもしなかった。感謝するどころか、稼ぎが少ないと文句を言う始末だった。 もっと早く、気づくべきだったのだ。 菊のような清らかさなど、彼女が世間に向けて被っている仮面に過ぎない。 その本質は、どこまでも利己的で、自己中心的だ。 私は彼女のために人を敵に回し、破滅し、すべてを失った。 彼女は私を救う力があったのに、ただ冷たく傍観することを選んだ。 無情で、恩知らずで、そして恥知らずだ。 私は鼻で笑い、彼女に向かって手を差し出した。 「お姉ちゃん。私の稼いだ汚いお金をあなたに管理させるなんて、心苦しいことだったでしょう。 もう二度とそんな辛い思いはさせないわ。だから、前に渡したキャッシュカード、今すぐ返してちょうだい」
2 宋玥の目に、ありありと驚愕の色が浮かんでいた。まさか私がカードを返せと言い出すとは、夢にも思わなかったのだろう。 宋家が破産して以来、彼女の手元には愛用の服やバッグ以外、何も残らなかった。 一銭も持たない彼女がこの数ヶ月間使ってきたのは、すべて私がこつこつ貯めてきた金だった。 以前、彼女を安心させるために、貯金は山ほどあるから心配いらないと嘘をついたことがある。 だが今思えば、私が嘘をついていることなど、彼女が気づかないはずがなかった。 それでも知らないふりをしていたのは、ただ当然のように金を使いたかったからに過ぎない。 しかし、私は一度死んだ身だ。今回はもう、一円たりとも彼女の食い物にされるつもりはない。 宋玥は黙りこくったまま、カードを出そうとはしなかった。 今度は私が軽蔑の眼差しを向ける番だった。「お姉さん、まさか惜しいんじゃないでしょうね? 私の金を汚いと蔑みながら、誰よりも楽しそうに使っておいて。そんな猫かぶり、クラスメートは知っているのかしら」 常に気位を高く保っている宋玥が、この皮肉に耐えられるはずもなかった。 彼女はバッグからカードをひったくるように取り出すと、私の体に投げつけた。 「返すわ。あなたが無理やり押し付けなければ、もらう気なんてなかったもの。 今後、どれだけあなたが頼んだって、二度と受け取ってあげないから」 そう言い放つと、つんと顎を上げ、そのまま去って行った。 その見え透いた虚勢に、思わず鼻で笑ってしまった。 そのけちな矜持が、一体いつまで続くか見ものだ。 一晩だって、持ちこたえられないかもしれない。 ホテルを出た私は、宋玥が学校の近くに借りていたアパートへ戻った。 この業界に入ったばかりの頃、会社は新人向けに、体型維持や演技などの合同レッスンを用意してくれた。 レッスン場から徒歩数分の寮まで手配してくれたのだが、 宋玥が学校の寮を嫌がったため、私は彼女のためにアパートを借りるしかなかった。 さらに、一人では危ないと彼女が言うので、会社が用意してくれた寮も断らざるを得なかったのだ。 そのせいで、私は毎日二時間もかけてレッスン場とアパートを往復する羽目になった。 毎日、死ぬほど疲れていたというのに、宋玥はそんな私に目を向けようともしなかった。 彼女が気にかけるのは、いつだって自分のことだけだ。 もう、自分を犠牲にするのはごめんだ。 私は最低限の荷物をまとめると、会社の寮へと引っ越した。 寮の部屋を片付け終えた、まさにその時、宋玥からメッセージが届いた。 【クラスメートと金華軒で食事してるんだけど、割り勘なの】 言いたいことは分かっていた。要するに、金がないから払っておいてほしいということだ。 以前の私なら、尻尾を振って支払いを済ませただろう。 だが、今は違う。二度と彼女のために何かをしてやるつもりはなかった。 それから数日間、私は宋玥からのメッセージも電話も、すべて無視し続けた。 これまで、彼女から十日に一度だって連絡が来ることなどなかったのに。 今では毎日、どうでもいい内容のメッセージが送られてくる。 本当に、さもしい人だ。 彼女がこうなったのは、金に困っているからだろうと分かっていた。 前の人生で、彼女は私の金を使っては気前よく友人に奢り、クラスの貧しい同級生に生活費を援助さえしていた。 さて、私がこの無料のATMを辞めた今、彼女のその気前の良さはいつまで続くのかしら。
3 好奇心に駆られ、私は宋玥と同じクラスの周蕊に連絡を取った。 周蕊は中学の同級生で、私の身に起きたことの全てを知っている。 彼女はもっと自分を大切にしなさい、宋玥の面倒まで見る必要はないと、ずっと前から忠告してくれていた。 けれど、私はその言葉に耳を貸そうとせず、しまいには彼女との連絡を絶ってしまったのだ。 今思えば、なんて愚かだったのだろう。 突然の電話に、周蕊はひどく驚いていた。 私は彼女にこれまでのことを詫び、かつての忠告が正しかったと認めた。 「あなたの言う通りだった。あの子は、私が尽くしてやるほどの価値もない人間だった」 私の変化に彼女は安堵の表情を浮かべ、そして、宋玥の近況を教えてくれた。 あの夜の会計は、結局、宋玥が支払ったらしい。 最初はまだ平然としていたようだ。私が後始末をしてくれるとでも高を括っていたのだろう。 だが、会がお開きになる頃になっても私から何の連絡もなかったため、さすがに焦り始めたという。 一文無しにもかかわらず、ちっぽけなプライドを守るために、結局は仲良くしていたどこかの御曹司に金を借りたそうだ。 その御曹司にしてみれば、数万円など端金だっただろう。 しかし、宋玥は最後の意地を失いたくなかった。 彼女に残された道は、自分のブランドバッグを売ることだけだった。 手元に残っていたバッグは全部で五つ。それも、かつては安物だと見向きもしなかったような代物ばかり。 値段にして、一つ数十万円といったところか。 だが、彼女が普段からそれらのバッグを大切に扱っていたわけではない。 中古品として売るとなれば、せいぜい二十万円ほどにしかならないだろう。 普通の学生なら、その金でかなり長く生活できるはずだ。 しかし、金遣いの荒い宋玥のことだ。一体どれだけ保つだろうか。 それに、売るためのバッグが、あといくつ残っているというのか。 むしろ興味が湧いてきた。全てのバッグを売り払った後、彼女がどうやって生きていくつもりなのか。